走れ痩せる

読書

吾輩は激怒した。夏に不覚にもビールを与えすぎ、今や傍若無人な振る舞いを始めた贅肉を必ずや討つと決意した。

思い返せば大学を卒業してからの十年余り、贅肉との勢力争いの日々であった。糖質制限、果物食、16時間断食、緑茶とチョコ…色々な戦法を試していたが、戦況は極めて劣勢である。

かくなる上はこの真理にすがるしかない。「走れ痩せる」である。

しかし、差し当たって吾輩が直面しているもう一つの真理がある。何かを習慣化したいときには、それをしていて「気持ち良い」と思えるポイントを見つけない限り、決して続くことはないという真理である。

そこで、本の力を借りることにした。『運動脳』である。

『スマホ脳』で有名なスウェーデンの精神科医アンデシュ・ハンセンが書いたこの本は、走ることが脳に与える驚異的な効果を科学的に解説したベストセラーである。ストレス軽減、集中力向上、記憶力強化、うつ予防など、走ることが脳機能を高めるメカニズムを明かしている話題作である。

この本の中に、走ることを習慣化するための気持ち良いポイントを見つけることはできるのだろうか…。

見つけた。『ランナーズハイ』である。45分間以上、空腹状態で長距離を走ることによって脳内麻薬…エンドルフィンや内因性カンナビノイド…を生成することができ、本書でいうところの「合法的に違法レベル」に多幸感に包まれることができるというのだ。

(余談だが、カンナビノイドを「甘美の井戸、とはまた乙な…」と最初は読み違えていた)

「ランナーズハイ」という言葉自体は知っていた。(本題とは逸れるがMr.Childrenの『ランニングハイ』は実に名曲で、今もよく聴いている)


が、ここまで具体的にランナーズハイに至る方法(走る時間や空腹状態など)を記している書籍は初めてだったし出会えたのは僥倖だった。

なぜ、エンドルフィンは出るのだろうか。

なぜ、痛みは抑えられ、多幸感が出るのだろうか。

それは腹ペコ状態の人類が、食べ物にたどり着くためである。

空腹の状態で、食べ物を見つけるために長距離を走って移動している…原始の人類はそんな場面が日常茶飯事であったようだ。それを可能にするために、脳は幸福物質を出す機能を身につけたのかもしれない。(裏を返せば、脳がそういう機能を持ちやすかった遺伝子をもつ個体が生き残りやすく、結果として子孫にもその特徴を持つものが増えていったのかもしれない。)

実際のところ、本書を読んで、毎朝7km走るようにしている。お恥ずかしいことに1キロ7分程度でしか走れない。でもそれくらいのペースの方が疲れすぎずに長く走ることができ、自分にとっては丁度良いようだ。そして7キロ走ると脳内麻薬が発生する45分ラインを超えることができる。すると、走行距離5キロを越えたあたりから、両足の筋肉痛は嘘のように消えていき、走っている疲労感も軽減され、走り終える頃には達成感と幸福感に包まれている。しかも、その感覚が少なくともその日の午前中いっぱいは続いている。

これはいい…。これならランニングを続けることができる。そう感じている。

しかしながら…走り終わった後の食事というものは、なんとも美味い。これもランニングハイとほぼ同時期から人類にプログラムされているのかもしれない。

果たして…吾輩の贅肉との勢力争いはどのように決着を迎えるだろうか。

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