小説「本日は、お日柄もよく」に学ぶスピーチの極意と言葉の力

読書

初恋の人だった幼馴染。彼の結婚式に参列者として出席している傷心の主人公「こと葉」。そこで聞くことになる最高の祝辞スピーチに感動し、圧倒される「こと葉」。

小説の冒頭で読める、このスピーチの文章。これを読んで胸が熱くならない読者は、いないのではないか。それくらい感動的な文章でした。言葉の力って、すごい。この部分だけでも読む価値がある小説です。

そして、その感動的なスピーチを聞いた主人公。自分自身も後日に友人の披露宴のスピーチを頼まれていたので、ぜひコツを教えてほしい!とスピーチの主に弟子入りしようとする。

そして、主人公が教えを乞う最強のスピーチライター「久美」。彼女に弟子入りするところから、物語が動き出していきます。

久美から主人公が、そして読者が教わるスピーチの極意。特に参考になった点をまとめました。

・会場が静かになってから話し始める。頭の中でイメージするのは「静」の一文字。

・エピソードや具体例をもりこんで全文暗記。

・トップバッターでの登場はできたら避ける。

・最後まで、決して泣かない。

「傲慢と善良」を読んだ時も思いましたが、小説の主人公の名前には、時にその物語のテーマが込められてることもあるのではないかと思います。傲慢と善良の主人公は、「真美」さんでした。今回の主人公は「こと葉」さん。まさに言葉の力がテーマの小説なのだろうと。

それだけに、グッとくる言葉がたくさん登場するのですが、自分の3選。

「ほんとうに、よかったね。こんなにきれいな、すばらしいお嫁さんで。」

「いますぐに。まっすぐに。」

『愛せよ。人生において、よきものはそれだけである』

→フランスの作家ジョルジュ・サンドさんの言葉の引用だそう。

まるでこの小説自体が感動的な一本のスピーチのようでした。読み終わった後、拍手を贈りたくなる。大切な人に会いたくなる。そして、この本を読んでいてよかった。読書が好きで良かった。心からそう思える。そんな小説です。

「今度はいっぱいお話をしましょうね」

この一行がある文脈で出てきた時、涙が出そうになりました。実は読んでいた期間に、義理の父が亡くなるということがあり。

読み手の人生の文脈と、物語の文脈とが共鳴する。その反響に癒されたり、奮い立たされたりする。だからこそ、小説はその読むタイミングによっても、心に刺さる言葉が違ったり、作品全体の味わいも違ってくるのだと思いました。

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