村上春樹さんによる短編集です。女性に去られたことによる登場男性の心の空白や、どうしようもない何かが書かれていますが、たぶんそれ以上に、男のもとから去っていった女性たちの心の空白や、何かが奥深い…それを見落としてはいけない気がしています。
「ドライブ・マイ・カー」。映画化もされ有名になった短編。人は、他者の内面を100%理解することはできない。ではどうすればいいか?を主人公と一緒に悩みました。主人公がたどり着いた答えに、納得しました…。
「木野」が、この短編集の中で最も村上春樹さんらしさを感じました。
村上作品の中で大好きな平仮名4文字「やれやれ」が、どの短編にも出てきませんでしたが、
「結局のところ、そんな目に遭うようにできていたのだ。」
という表現に置き換えられていたように感じました。
この短編集の前書きにて、村上春樹さんが語るには、「本能的な物語の鉱脈」が自分の中にあり、そこからすくい上げて小説を書いているそうです。きっと「物語の鉱脈」は、きっと誰の中にも存在していて、読んだ本や、人生経験などによって、豊かになっていくのだと思いました。辛い経験も、鉱脈を豊かにしていると思えば見え方が変わっていくのでしょう。
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