ヒグマのニュースが出るたびに思い出してしまう小説があります。それは…

読書
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羆嵐(くまあらし) 吉村昭さんによる小説です。実際に起きたヒグマによる連続殺傷事件をモチーフにした小説ではあるのですが、あまりにもリアルで最初に読んだ時はノンフィクションのルポルタージュだと思ってしまいました。その思い込みは10年以上続いていました…

この小説は、1915年に北海道で起きた「三毛別羆事件」をベースにしています。冬の北海道、苫前村の開拓地に現れた巨大なヒグマが、2日間で7人の命を奪った凄惨な事件。雪深い山間の村に忍び寄るヒグマ…小さい子や、妊娠中の女性まで容赦なく、しかもしつこく襲ってくるその姿が、まるで目の前で繰り広げられるかのように迫ってきます。

淡々としていながらもリアルな文章が、森の中に潜む獣のように、読み手に迫ってきます。ヒグマが家屋に侵入し、家族を次々と襲う場面は、息をのむほどの緊迫感。特に印象的なのは、ヒグマの力強さと異常なほどのしつこさ、そして人の無力さ、無念さでした。村人たちの絶望、逃げ惑う姿には胸を締めつけられます。

自然との共存を考えさせられます

ヒグマのこわさ、棲み分けの大事さを教えてくれるこの作品は、読み終えた後も心に重く残ります…

ここ数年、度々報道されるように、ヒグマによる被害が続いています。また、星野道夫さんが命を落とした事件も、脳裏に浮かぶ方も少なくないでしょう。

かといって、ヒグマを全て駆除すれば良いわけでは決してなく、お互いに共存していくためにはどうしたら良いのか…改めて考えさせてくれる物語です。

羆嵐 (新潮文庫)
北海道天塩山麓の開拓村を突然恐怖の渦に巻込んだ一頭の羆の出現!  日本獣害史上最大の惨事は大正4年12月に起った。冬眠の時期を逸した羆が、わずか2日間に6人の男女を殺害したのである。鮮血に染まる雪、羆を潜める闇、人骨を齧る不気味な音……。自...

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