主人公に舞い込んでくる、少し怪しい物件の話。その物件を深掘りしていくと、人を媒介にして、人から人へ、土地から土地へ伝わってゆく、恐ろしい「穢れ(けがれ)」の存在が明らかになってきます。
漫画「呪術廻戦」に、残穢という言葉が出てきます。もしかしたら、この小説から参考にされたのかもしれません。
作者の小野不由美さん、とても丁寧な文で、怖さを届けてきます。おそらく、ご自身の大学時代の実話と思われるようなエピソードも入っていたり、実在するホラー作家さんも作中に登場したりして、どこまでが物語で、どこまでが実話なのか、読んでいるとその線引きがあいまいになってきます。 「わからなさ」こそ、怖さだと痛感させられます。 そして、「触れてはいけないものには、近づいてはいけない。感染するから。」という、私たちの心の奥底に刻み込まれた本能のようなものも刺激されます。
最初、2ページ目からから出てくる霊もトラウマになるレベルで怖いのですが、その影響で命を落としてしまった人物も、霊になって出てくるという場面があります。関係者にただ謝りにくるだけなのですが、これも怖かった。 というか、もう全部怖かったです…。
読後、私なりの解釈というか、願いとして…。
残穢で描かれていたこと。
人のマイナスな思いは、残り続け、そして人を介して伝染する。
ということは、人のプラスの思いも、同様に、残り続け、人を介して伝染させることができる。そう信じたい… と、思いました。
少なくとも、「愛情」であったり、「本好き」は、人を介して伝染するかと。実感を伴いつつ、そう願っています。
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